2005年11月02日

砂の女の舞台は酒田市近くの村

『砂の女』の舞台は山形県酒田市近くの村である。原型の短編『チチンデラヤパナ』の冒頭部分には、既に「S駅」という記述がある。
酒田に関する話は、全集16, 17巻の文章に散見される。ここでは、酒田にまつわる興味深い文章を二点取り上げる。
まず、16巻所収の”モチーフの発見”を読むと、『砂の女』のモチーフは、ある週刊誌のグラビア写真に載った山形県酒田市の近くの風景だと語っている。安部の琴線に触れるような、砂と共生しなければならない村の様子が生々しく描かれていたらしい。

また、17巻所収の"酒と車と・・・"では、以下のことが書かれている。
じつをいつと、この原稿を書いている現在、「砂の女」のシナリオ・ハンティングのために酒田に出掛けた、帰りの車中なのである。いきがかり上、酒田の酒について一言ふれておくのは当然の義務であろう。

義務と正当化しているところが面白い。また、シナリオ・ハンティングとは、ラジオドラマ版「砂の女」のためのものだと思われる。それに続いて、
出発前から、酒田というからには、よほどうまい酒にめぐり合えるにちがいないと、大いに期待に胸をふくらませていたものである。

と書かれている。行くと、確かに酒の数は多いが、地名について意外な話を耳にしている。
ところが、よくよく地元の人に聞いてみると、酒田というのは後年つけた当て字にすぎず、もとは砂潟と書いてサカタと読ませたものらしい。

最初私が目にしたとき、あまりに話として出来すぎているため、安部の作り話ではないかと思った。しかし、それを否定する根拠もないため、ひとまずは信じておくほかはない。
以上の二つの文章を含めて、16巻と17巻には、酒田や『砂の女』にまつわるエピソードが多数収録されているので、目を通されることをお薦めする。

[note]
2005/12/3修正 
「砂の女の舞台は酒田市」から「砂の女の舞台は酒田市近くの村」に変更
その他誤記の訂正
posted by w1allen at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 安部公房を読みこむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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