2011年01月15日

『壁ーS・カルマ氏の犯罪』の感想

私のサイトで、たまに「安部公房のAという作品に出てくるBは一体何を表しているのでしょうか?」と質問に来られる方がいます。つまり、安部公房が何を主張、或いは意図しているのか分からないと感じる人がおられるようです。

さて、詩と哲学から小説の世界に躍り出た代表作『壁ーS・カルマ氏の犯罪』は、既存の小説の形式を根底から破壊し再生させた記念碑的作品です。名刺に「名前」を奪われた主人公が、遭遇する数奇な物語をどこかしらコミカルに描いているのが素晴らしいです。いやこう書いた私も最初は「わけわからん」と思いましたよ。しかし、読みなおすごとに味わいが違うのです。

多くの作品において、目まぐるしく変わる展開とストーリーに読者が振り回され、最後は作者に置いてきぼりにされる印象があります。或いは、読者にある種の挑戦状を叩きつけた作品と見ることもできると思います。その挑戦状を受け止めることが、私の読書の楽しみです。
ラベル:安部公房
posted by w1allen at 19:55| Comment(7) | TrackBack(0) | 安部公房を読みこむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。安部公房の作品は難解だとおっしゃる方が多いのですが、私は彼の独特の(カフカに似た)世界観が大好きです。
Posted by anri_luna at 2011年01月19日 19:52
こんにちは。安部公房の作品は難解だと仰る方が多いのですが、私は彼の独特の(カフカに似た)世界観が大好きです。
名刺とSカルマ氏との軽快なやり取りが面白くて、あっという間に壁を読んでしまいました。
Posted by anri_luna at 2011年01月19日 19:58
同感です。安部の作品は、解釈しようとすると難しいですが、読書という体験においては、これ以上の刺激は類を見ないと思います。
Posted by w1allen at 2011年01月19日 23:03
やはり同じものが二つ入っていましたね。ごめんなさい。
私にとって安部公房は、大人の御伽噺の様なものです。子供の頃母に読み聞かされた物語の様に、次に何が出て来るのか、ワクワクするお話です。
Posted by anri_luna at 2011年01月20日 15:31
二重投稿のことは気になさらないでください。

次にどんな展開が待ち受けているのかわからなくて、ドキドキしてしまう一種の冒険小説でもあると思います。そんなワクワク感をいつまでも持っていたいですね。
Posted by w1allen at 2011年01月23日 19:38
安部公房の事を反社会的だと言った人がいましたが、私はそこまで考えた事はありません。社会的だとか反社会的だとかいう事は作品の優劣に余り関係ない様な気がします。面白ければそれだけで十分だと、私などは解釈をしようという気にもならないのですが・・・
Posted by anri_luna at 2011年01月26日 18:51
社会的或いは反社会的という切り口だけでは、安部の作品を捉えることは出来ないでしょう。メビウスの輪のごとく、社会的と思っていたことが反社会的に見えるパラドックスに陥ってしまう危険性が高いと思います。
作者の思想は作品の優劣には関連しないことと面白ければそれだけで十分との意見に、同意します。
そして、面白く読めたその次の段階で、何故そう感じたかを伝えるツールとしての感想や解釈という行為が残されているのかなと思います。
Posted by w1allen at 2011年01月26日 21:13
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