その後、岡本太郎を自分なりに評価できるようになったのは、自分で岡本太郎についての書物や絵画などに触れたり、岡本太郎美術館に行くようになったり、安部公房全集で対談記事を読んだりするようになってからだった。
さて、松尾貴史のモノマネは、見事に私にバイアス(偏見)を与えてくれた。そのバイアスがなければ、岡本太郎についてもっと早いうちに、そしてもっとニュートラルな立場で評価できたかもしれない。そういう可能性があることを否定はしないが、実は松尾貴史にお礼が言いたい気持ちもある。
それは、「他人を評価するためには、自分で資料を集め、自分の目にその芸術家がどう映るか自分に問わなければならない。」という教訓を与えてくれたからだ。また、自分の意見がなく、他人の評価を鵜呑みにする人が意外と多いことを教えてもらったような気がする。