2016年08月29日

『R62号の発明・鉛の卵』読書会報告

○はじめに
2016年7月18日(月・祝)高槻市にて、KAP読書会を開催し、『R62号の発明・鉛の卵』(新潮文庫)を取り上げました。表題二作の他「棒」も扱いました。
参加者は6名でした。Ustreamでの中継もしました。なお、プライバシーに配慮して、刷りガラスのような映像となっております。3時間を超えたため、最後のほうが一部切れています。次回は、2つに分けて中継・録画します。
今回は、うれしいことにUstreamに書き込みがありました。今後もコメントを取り上げていますので、書き込んでいただくと有り難いです。

次回以降ネット参加もご検討ください。勿論リアル参加していただければ尚嬉しいです。
中継のURLは、http://www.ustream.tv/channel/9p4MS4HaSRfです。次回も変わりません。
今回の映像は、Youtubeにて公開しています。
https://youtu.be/1tIEDfHMTVw
過去の読書会の映像は
https://www.youtube.com/user/w1allen/videos?
をご覧ください。

○R62号の発明
R62号が機械を発明製作し、高水社長を殺してしまうラストシーンが、果たして復讐と言えるかどうかについて多くの意見が出されました。復讐ではないという意見が多数でしたが、完全に意見が一致し、皆が納得できたわけではありませんでした。
「(最近話題になった)アルファ碁の打ち手が人間の理解を超えているように、R62号が作った殺人機械も人間の論理を超越しているのでは?R62号にとっては、資本家と労働者の区別は意味無いのでは?」という意見もありました。
また、「プログラムに則って、R62号は行動したので、復讐の意図を持ちようがないと思う」という意見に対して、「しかし、花井に恋心をもつ場面があり、それはプログラムから外れていると思う」という意見もありました。
読書会後、当方の掲示板「貝殻草と贋魚」
http://8010.teacup.com/w1allen/bbs
でも議論がかわされました。

何故、R62号は機械を作ったのかという疑問から端を発し、
「人間の労働は、何かを作るためにしているのではない。労働自体が、労働者にとって目的といえる。本作の機械も何かを作るという目的はなく、労働者を働かせるという目的しか無い。安部公房は、労働の本質を捉えていると思う」という意見があり、それを受けて、「本作における労働は、現実的な意味での労働ではなく、観念的な意味での労働であると思う」や「自分が何のために労働をしているのかわからないというブラックボックス的な状況を表しているように思う」という意見も出ました。

その他、「ロボットなどが実用化すると、人間のやることは無くなっていくかもしれない。そういう時代を先取りした先見性があると思う」
「ロボットというが、脳に装置を埋め込んだものであって、本来のロボットではない。バイオノイド、アンドロイドやサイボーグという呼称のほうが、まだ即しているかもしれない」
「冷酷で狂気的な描写があり、安部公房がそう書かざるを得なかったことがせつないし、つらい」
「14連勤した自分が、R62号と重なる部分があるように思えた」
などの意見もありました。
関連作品として、チャペックの「R.U.R」やカフカの「流刑地にて」への言及もありました。

○鉛の卵
「安部公房は緑色にマイナスのイメージを持っていたのでは?」と緑色や植物という点についてコメントがありました。
80万年後という設定にリアリティがなく、SFとしてどうかという批判的な意見もありました。一方、H・G・ウェルズの「タイムマシン」も80万年後の世界の物語であり、それに倣ったのではないかという意見もありました。
「どれい族=真の現代人の描写が少ない。真の現代人の世界がどういうものか分からないのに、緑色人の世界に後ろ髪を引かれる思いがして、錯乱状態になるのはなぜか?」
「緑色人のユートピア世界は、家猫の生活に通じている。快適な生活だが、主人がいなくなると、成立しなくなる。緑色人のユートピア的生活も、現代人の世話がないと成立しないだろう」という意見がありました。
関連作品として、小松左京の「日本アパッチ族」や開高健の「日本三文オペラ」への言及もありました。

○棒
非常に短い作品だったこともあり、私を含め解釈が難しいという印象の方が多かったようです。
先生や2人の学生の裁きを最後の審判のイメージでとらえた方もおられました。
「この作品は、何故とは聞いてはいけないのかもしれない」という声もありました。
「赤い繭」の繭は拾われるが、「棒」では放置されるという対比をされた方もいました。

○運営について
今回から、各作品の冒頭の時間に、自己紹介の時間とは別に各人の感想などを述べる時間を設けました。参加者も発言しやすくなり、主宰者も参加者の声を拾いやすくなったのではないかと自画自賛しています。
高槻の会場は今回初めてでしたが、特に問題はなかったと思います。ただ一点、冷房が冷たすぎるという声があったので、次回はその点に配慮したいと思います。

○二次会
二次会は、餃子の王将へ参加者全員で行きました。
どういうわけか筆者が開始早々大量に注文してしまい、30分ぐらいで皆さんを満腹にさせるという悪手を指しました。参加者のペンギンさんから、「今後の課題ですね」とコメントを頂きました。次回はこういうことのないように致します。満腹になってはしまいましたが、安部公房の話は尽きず、みなさん安部公房好きだなあと再認識しました。岡田さんが「無名詩集」の現物を持ってきて、ビックリさせていました。皆さんの本棚事情を語り合ったり、楽しいひとときでした。

○次回
次回は、9月19日(月・祝)に高槻市民会館で開催します。課題本は、同じく『R62号の発明・鉛の卵』です。作品は、「パニック」「死んだ娘が歌った」「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」の三作品を取り上げます。

○お礼
また、ツイッター、Facebookなどで広報しましたが、リツイートなどの協力していただいた皆様にこの場を借りて厚く感謝の意をお伝えします。また、いつも読書メーターに広報を掲載していただいている、まるさんには格別の感謝の意をお伝えします。

(文責:アレン)
posted by w1allen at 05:25| Comment(0) | KAP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする