2007年03月23日

[知る]別巻待ちですが、本名は、やはり「あべきみふさ」だと思っています。

以前、"安部公房の本名"という記事名で、以下の文章を書きました。

2003年1月末に安部MLにおいて、加藤弘一氏から安部公房の本名について新説があるということを教えていただきました。
 従来の定説は、本名は「あべきみふさ」というもので、私もこれに従っていました。新潮日本文学アルバム「安部公房」の谷真介による略年譜にもそう書かれています。
 しかし、新説では、本名(戸籍上という意味で)も「あべこうぼう」となっています。(成人まで両親から「きみふさ」と呼ばれていたそうです。)これには、確かな裏付けがあるようです。詳しくは、加藤弘一氏の「ほら貝:作家事典」を参照して下さい。


 あれから4年が経ちました。棚上げしたままも気持ちが悪いので、現時点での私見を述べます。親類の方や研究者の方からの話をまとめると、やはり本名は旧来通り「あべきみふさ」だろうと思っています。ただし、安部公房の戸籍謄本などを直接調べておらず、また戸籍に関する法令等に詳しくないので、加藤氏の新説を完全に否定する程の自信はありません。安部公房全集別巻にて、この問題に対する回答が得られるのではないかと期待しています。
ラベル:安部公房 本名 Name
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2007年03月11日

[原稿]私の中の安部公房

[原稿]私の中の安部公房

これは、郷土誌「あさひかわ」2002年7月号の特集”「安部公房」没後10年”に寄稿させていただいた文章です。今回、あさひかわ社のご厚意によって、ウェブで公開させていただく許可を得ました。安部公房との出会いなどについて筆をとったものです。

私の中の安部公房


 私が初めて安部公房の名を目にしたのは、彼の死亡記事だったと思う。夕刊の一面に出ていたので大作家が死亡したのだなと思ったが、それ以上の思いは格別なかった。彼の作品を読み始めたのは、それから三年ほど経ち、既に大学生になっていた時だった。暇つぶしに、「新潮文庫の100冊」の中の1冊に選ばれている『砂の女』を手にしたというそれだけだった。そこから始まって、安部の作品世界の探訪という「終わりなき道」を歩くはめになるとはその当時夢にも思わなかった。
 『砂の女』を読んで、まず驚かされるのは、砂や昆虫についての非常に精緻な記述である。砂の粒径についての文献引用や砂の問題が結局流体力学に属するものであるらしいという私見を入れるあたりは、まるで科学書であるかのような冷静で正確な記述である。それでいて、最初は頑なに抵抗していた村人の論理を受け入れてしまうという主人公の内面心理の変容を細部にわたり生々しく描いている。主観と客観の絶妙なバランスや世界観の逆転など、あらゆる意味で安部の小説は画期的な文学の新製品と言える。
 安部の作品は難解であるとよく言われるが、私は彼の作品が面白くて仕方がない。恐らくその当時、彼ほど読者を楽しませようと小説構成を考えてた作家はいなかったのではないだろうか?独特の比喩表現、漫才のような会話、そして多くの作品で見られた手記形式にこめられた切迫感などによって、読者を引き込ませる巧みなストーリー展開には、小説を面白くするためにはどんな手法も辞さないという貪欲さを感じる。しかし、それと同時に笑って済ませられない重大な問題も含まれている。例えば、「自由とはいったい何なのか?」ということについても困惑させられてしまう。束縛されない自由から束縛される自由を選んだ仁木順平を非難するには、一体どんな言葉が必要なのだろうか?彼の作品には、殺人や詐欺といった常識では犯罪になることがよく出てくるが、それらを単純に非難するのにはためらわざるを得ない。饒舌な加害者の方に負けてしまいそうである。では、寡黙な被害者は一体どこへ行けばいいのだろうか?いや、どこかで加害者と被害者という区分自体が意味を無くしてしまったのだろう。
 安部は、極めて論理的に常識を破壊していった。それは、私を固定観念の呪縛から解放してくれたが、同時に飛翔と墜落とが背中合わせの極めて危険な自由を与えられたことも忘れてはいけない。頁をめくるごとに、物語の創造と破壊を目の当たりにするのは面白くもあり恐ろしくもある。しかし、もはや読者という目撃者になった以上、その役を降板することもできないらしい。私は、彼の作品を読み続けなければならなくなり、今に至っている。極めて巧妙な仕掛けだなと、回転車を回し続けるアムダでならぬハムスターは思うわけである。
 なお、現在私はインターネット上で、「安部公房解読工房」という名のホームページを開設している。掲示板もあるのでお気軽にアクセスして頂きたい。
ハンドル名:アレン
URL:http://www.geocities.co.jp/Bookend/2459/novel.htm
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