2007年01月27日

安部公房はハーメルンの笛吹き男

 20世紀に入る直前、日本でも夏目漱石を初めとする職業作家たちが誕生し、彼らは読者という存在を意識しない訳にはいかなくなった。読者に迎合する表現を求めるか、それとも読者と対決する表現を求めるか、二つの道を作家は選ばなくてはならなくなった。
 綺麗な文章表現形式を追求するロシアフォルマリズムは、前者に属するだろう。そして、安部公房の小説は恐らく後者に属すると思う。そして、安部公房の小説の真髄を「意味に到達する以前の表現の世界に読者を連れ出し、読者と共にその世界を彷徨う。」ものだと私は推測する。その際、作者はもはや馬鹿丁寧なツアーコンダクターではなくて、ハーメルンの笛吹き男になっているのではなかろうか?そういえば、安部公房の表現にはいつも笛の音に似た詩的な響きがあった。
ラベル:安部公房 文学
posted by w1allen at 16:09| Comment(3) | TrackBack(1) | 安部公房を読みこむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月22日

「安部公房という新種のシンククライムを根絶せよ」

 これは、敵国オセアニア真理省の極秘文書である。スピークライトで出力した文書であるが、作業後メモリホールに投げ損ねたものをわが国イースタシアのスパイが入手したものである。なお、そのスパイの消息は現在に至るまで不明である。
 入手した文書は、最新版のニュースピークで書かれているため、オールドスピークどころか二、三世代前までのニュースピークに精通していたわが国の翻訳職員ですら、翻訳に一週間という時間をとられてしまった。最新版のニュースピークに関する情報を入手することは、わが国の至急課題と思われる。さて、その問題の文書は以下のものである。
1984年1月22日

愛情省からイングソック党員諸君に告ぐ
「安部公房という新種のシンククライムを根絶せよ」


 旧日本国の移民者たちが、未だに日本語という少数民族言語で書かれた出版物を当省の許可なくプロレたちに販売していることは、極めて憂慮せざるを得ない状態と言わねばならない。中でも、「安部公房」という物書きが書いた出版物を購入したプロレは、出身地・居住区・性別・年齢などに関わらず、一定の割合で存在する。
 周知の通り、当省では定期的に思想犯を一斉矯正し、彼らのシンククライムの誤りを告白させているが、困ったことに各思想犯によって告白内容が全く違うということである。また、思想犯の中にまとまった結びつきはなく、互いに面識がなかった思想犯が多数を占めるという異例の事態に発展している。
 昨年に行った一斉矯正においては、「砂の女」という文書が、日本語版ばかりでなく、イースタシア版、ユーラシア版、オールドスピーク版など多数の言語に翻訳されているという全く恥ずべき事態を目の当たりにしてしまった。
 重度の思想犯になると、漢字(原注:イースタシアで使われている象形文字)の「公安部」という文字を見せただけで、「アベコウボウ」と叫んだという症例が報告されている。その者は、現在に至るまで回復せず、今なお当省処置室にて矯正中である。
 BBを敬愛してやまない君達イングソック党員がこの現状に憤りを感じるのは至極当然のことである。しかし、当省も手をこまねいていたわけではない。当省は、この度「安部公房シンククライム」を新種の高病原性シンククライムと位置付け、以下の対策を講じることを決定した。

 1.各党員は毎日プロレの街に行き、安部公房作品を取り扱っている業者及び読者と接触を試みること。接触に成功した際は、当然のことながら直ちに連行せずダブルシンクを用いて、相手のシンククライムの内容を把握すること。
 2.当該思想犯の居所とそのシンククライムの内容を当省に通報すること。ただし、作品は処分してはならない。ニュースピーク版への翻訳のために、資料として残しておく必要がある。なお、当該思想犯は当省処置室にて完全なる矯正を行う。
 3.通報者数に応じて豊富省から配給されているチョコレートが増量されるので、積極的に通報活動に励むこと。

この成果はヘイトウィークの大会にて報告される予定です。
ありがとうBB。あなたのお陰で、我々は常に勝利を収め続けています。
愛情省公安部
ウィストン・スミス

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2007年01月14日

[開催中]飛ぶ男=The Flying Man 安部公房へのオマージュ

安部MLにおいてほら貝さんより教えていただいたイベント情報です。
詳細は、ほら貝さんの"飛ぶ男=The Flying Man 安部公房へのオマージュ"を参照して下さい。
1月23日17時終了だそうです。

内容は、全集の装丁を手がけられた近藤一弥氏によるインスタレーション作品です。原弘賞のクリエイターたち展と世田谷文学館の安部公房展において、「飛ぶ男」を題材に使ったインスタレーション作品を発表されてきた近藤氏ですが、リンク先の写真を見た感じでは、今回はそれらとは少し趣向が違うようです。

行かれた方の感想が聞きたいので、このブログにコメントもしくはトラックバックしていただければ幸いです。
posted by w1allen at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 安部公房を観る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする