2005年11月02日

原弘賞のクリエイターたち展

○始めに
静岡県三島市にある特種製紙総合技術研究所PAMで、2003年3月29日まで「原弘賞のクリエイターたち――2」展が開催された。その中で安部公房全集の装丁を手がけた近藤一弥氏のブースがあり、それを見に最終日、三島まで行ってきた。そのリポートを書こうと思っていたのだが、ずぼらな私はなかなか実行できずにいた。そのうち、忘れてしまいそうなので、今のうちに書き留めておこうと思う。

三島駅から、バスに乗る。降りると、特種製紙の工場があった。ちょっと歩くと、会場の特種製紙総合技術研究所。すごくきれいで、モダンな建物だった。

○展示の内容
1.全集の箱の展示
箱を切り開いて平面で展示してくれていたので、今まで気づかなかった発見がいろいろとあった。特に、第四間氷期の際の取材と思われる電子計算機の迫力はすごいものがあった。

1.「安部公房の部屋」
安部公房自身がとった写真や箱根の別荘の写真をもとに作られた短編映画。入る際、入り口付近に男女二人組みが機材をもっているのが目に入り、何をしているのかなと思った。

 暗い部屋に入ると、前方に三面鏡のような感じでスクリーンがあり、その手前のテーブルにテキストが映し出されるしくみになっていた。

 映画が始まると、箱根の別荘の様子が映し出された。いろんなオブジェがあったが、私は特に骸骨の模型に目を惹かれた。(解説文によると、イギリス製の紙で作られたものだそうだ!)
 やがて、中央のワープロがズームアップされた後、安部が撮った都市の写真が流れ始める。時代とその風俗が瞬間凍結されて写真が流れてくる。場面は一転して、高速道路を走る自動車から見える風景に移る。トンネルに入り、どんどん加速されて、画面が反転する。その後、また安部の写真に戻るが、もう一枚一枚を追えるようなスピードではない。これは、安部が駆け抜けた時代とそのスピードを表現しているのかと思った。
 そして、再び安部のワープロがでてきて、「起動ディスクを入れてください」との旨のメッセージが出て終わった。

 一方、手前のテーブルには、「飛ぶ男」のテキストが流れていた。昔のワープロ風の感じで、変換作業の場面も映し出されていた。当初、液晶ディスプレイを使っているのかと思ったが、加藤@ほら貝さんによると(*1)、天井から投影するしくみのものらしい。

 ところで、、入り口の謎の二人組は、上映が始まると入ってきて、後ろで待機。上映の途中で、私を含めた観客がスクリーンに映っていた。ディスプレイを眺める観客をディスプレイに写すというやつだ。彼らの行動の意味が、そのときわかった。

 その後、世田谷文学館で安部公房展があり、このバージョンアップ版が展示されていた。そのときは、上記のような二人組はいなかったが、出口付近の小型モニタで、観客を監視するという趣向になっていた。

○終わりに
近藤一弥氏の講演会にいく予定だったが、インフルエンザにかかったために、講演を聴くことはできなかった。もし、聴講された方がいれば、その内容をご教示頂ければ幸いです。また、二年も前のことなので、本文に事実誤認等があるかもしれませんので、そちらの方もご指摘いただければ幸いです。

[参考]
(*1)安部公房短信 2003
http://www.horagai.com/www/abe/tansin/tnsn2003.htm
posted by w1allen at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 安部公房を観る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

砂の女の舞台は酒田市近くの村

『砂の女』の舞台は山形県酒田市近くの村である。原型の短編『チチンデラヤパナ』の冒頭部分には、既に「S駅」という記述がある。
酒田に関する話は、全集16, 17巻の文章に散見される。ここでは、酒田にまつわる興味深い文章を二点取り上げる。
まず、16巻所収の”モチーフの発見”を読むと、『砂の女』のモチーフは、ある週刊誌のグラビア写真に載った山形県酒田市の近くの風景だと語っている。安部の琴線に触れるような、砂と共生しなければならない村の様子が生々しく描かれていたらしい。

また、17巻所収の"酒と車と・・・"では、以下のことが書かれている。
じつをいつと、この原稿を書いている現在、「砂の女」のシナリオ・ハンティングのために酒田に出掛けた、帰りの車中なのである。いきがかり上、酒田の酒について一言ふれておくのは当然の義務であろう。

義務と正当化しているところが面白い。また、シナリオ・ハンティングとは、ラジオドラマ版「砂の女」のためのものだと思われる。それに続いて、
出発前から、酒田というからには、よほどうまい酒にめぐり合えるにちがいないと、大いに期待に胸をふくらませていたものである。

と書かれている。行くと、確かに酒の数は多いが、地名について意外な話を耳にしている。
ところが、よくよく地元の人に聞いてみると、酒田というのは後年つけた当て字にすぎず、もとは砂潟と書いてサカタと読ませたものらしい。

最初私が目にしたとき、あまりに話として出来すぎているため、安部の作り話ではないかと思った。しかし、それを否定する根拠もないため、ひとまずは信じておくほかはない。
以上の二つの文章を含めて、16巻と17巻には、酒田や『砂の女』にまつわるエピソードが多数収録されているので、目を通されることをお薦めする。

[note]
2005/12/3修正 
「砂の女の舞台は酒田市」から「砂の女の舞台は酒田市近くの村」に変更
その他誤記の訂正
posted by w1allen at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 安部公房を読みこむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする